出願のベース

 アメリカでの商標出願には、その出願のベースが必要とされます。出願のベースが異なれば、出願書類の形式や後の審査が異なります。マドリッドプロトコルに基づく国際登録出願を除き、複数の出願ベースを指定することができます。

 アメリカで実際に商標を使用している場合には、使用ベースの出願となります。

 その場合、商標が実際に使用されていることを示す使用証拠を提出しなければなりません。アメリカにおける「商標の使用」とは、商標を実際の商品又は梱包に付していることを言います。商品の広告やチラシにのみ使用している場合には、「商標の使用」には該当しません。サービスマークについては、広告的使用は商標の使用と認められます。

 また、商標が初めてアメリカで使用された日(使用開始日)についての情報を提供しなければなりません。これは、国際通商又は州際通商において商標が最初に使用された日となります。即ち、日本(外国)からアメリカへ最初に商品が出荷された日、又はアメリカの州際取引が開始された日となります。

 商標をまだアメリカで使用しておらず、今後使用する意図がある場合には、使用意図ベースでの出願となります。

 この場合、登録査定後6ヶ月以内に、実際に商標の使用を開始したという使用宣誓書と、商標の使用証拠を提出しなければなりません。使用開始日と使用証拠については、上記「使用ベースの出願」と同様、国際通商又は州際通商での使用であり、商品又は梱包上に付された商標の使用でなければなりません。サービスマークに関しては広告的使用が商標の使用と認められます。

 使用宣誓書では、指定商品/サービスの全てに関して商標を使用していることを宣誓します。実際に商標の使用を開始しなかった商品/サービスについては出願から削除することになります。使用証拠は基本的に1つの商品分類につき1つ提出すればいいのですが、審査官が合理的必要性を認めた場合には、更なる証拠資料を求められることがあります。

 使用宣誓書の提出期限は6ヶ月ごとに5回まで延長可能です。即ち登録査定から36ヶ月以内に提出しなければなりません。期限を延長して出願を維持するには、相当の費用がかかりますし、期限までに提出できなければ出願放棄として扱われます。従って、使用意図ベースで出願する場合は、アメリカへの商品の出荷予定など、実際の商標の使用開始予定時期をよく検討してから、タイミングを見計らって行うことが大切です。

 日本で商標登録がされている場合に選択することができます。商標の態様は日本の登録と一致していなければならず、指定商品/サービスは日本の登録の範囲内でなければなりません。そして本国登録の登録証の写しとその翻訳を提出する必要があります。

 本国登録ベースと使用意図ベースの両方をベースにすることも可能で、どちらかのベースに基づく出願が維持できない場合、もう片方のベースに基づく出願を維持することができるというメリットがあります。

 ①本国登録ベースを維持する場合:商標の使用が未だ開始されず使用証拠を提出できない場合に、使用意図ベースを削除して本国登録ベースを維持することができます。

 ②使用意図ベースを維持する場合:アメリカの指定商品/サービスが日本の登録の範囲内であるかどうかは不明瞭な場合があり、もし日本の登録の範囲外と審査官が判断した場合、本国登録ベースを削除して使用意図ベースを維持することができます。

 ③両方のベースを維持する場合:本国登録の登録証の写しと翻訳以外に、使用宣誓書と使用証拠を提出する必要があります。

 本国登録ベースのみの場合は使用証拠を提出しなくても登録されますが、実際に商標の使用を開始しなければ排他的権利は発生しません。また、登録後5年目と6年目の間、及び更新時には商標法第8条の使用宣誓書と使用証拠の提出が必要ですので、アメリカの使用主義はここでも維持されていると考えられます。

 パリ条約に基づいて、日本(本国)での商標登録出願日から6ヶ月以内に優先権を主張して行う出願です。この場合、日本における出願日がアメリカでの出願日となります。その際、出願番号、出願日などの情報が必要になります。 本国出願が登録になるまではアメリカでの審査は保留され、登録になった時点で登録証の写しと翻訳を提出しなければなりません。

 本国出願ベースと使用意図ベースの両方をベースにすることも可能です。その場合、どちらかのベースによる出願が維持できなくなった場合に、もう一方のベースによる出願を維持することができるというメリットがあります。

 ①本国出願ベースを維持する場合:商標の使用が未だ開始されず、使用証拠を提出できない場合に、使用意図ベースを削除して本国出願ベースを維持することができます。本国で登録になった時点で登録証の写しとその翻訳を提出しなければなりません。使用証拠が提出できるにも拘らず使用意図ベースを削除する場合は、アメリカの指定商品/サービスが日本の出願の範囲であることを確認してから削除することが重要です。

 ②使用意図ベースを維持する場合:本国出願が登録になる前にアメリカでの使用を開始した場合、本国出願が登録になるのを待たず、本国出願のベースを削除して使用証拠と使用宣誓書を提出することによって登録させることができます。その場合、優先権を主張した出願日は維持されます。本国出願が何らかの理由で拒絶となった場合も、本国出願ベースを削除して、使用意図ベースを維持することができます。

 ③両方のベースを維持する場合:使用宣誓書と使用証拠、及び本国登録の登録証の写しと翻訳を提出しなければなりません。

 本国出願ベースのみの場合、上記の本国登録ベースの場合と同様に、使用証拠は提出しなくても登録されますが、使用を開始しなければ排他的権利は発生しません。また、登録後5年目と6年目の間及び更新時には商標法第8条規定の使用宣誓書と使用証拠の提出が必要です。 

 マドリッドプロトコルに基づく国際商標出願をして、アメリカを指定国とし、国際登録の「保護拡張請求」(Request for Extension of Protection)をすることができます。その場合、使用意図宣誓書を国際商標出願の願書に添付しなければなりません。この場合、使用証拠の提出は求められず、商標を未だ使用していなくても請求を拒絶されることはありません。しかし、保護拡張証明書(登録証に相当するもの)の発行日から5年目と6年目の間、及び同証明書発行日から10年毎に使用宣誓書と使用証拠が必要です。